バードウォッチングツアー 湖北の水鳥と猛禽類を楽しむ
バードウォッチングツアー 湖北の水鳥と猛禽類を楽しむのツアーレポートの後編です。
前編は ⇒ 湖北の水鳥と猛禽類を楽しむ 前編
コハクチョウの群れ
オオワシがいる山本山へ向かっている途中、コハクチョウの群れを発見したので、先にコハクチョウを観察することになりました。車を降りると、ヒバリの「ピーチク ピーチク」という鳴き声が、空や田んぼの中など、あちらこちらから聞こえてきました。
コハクチョウは琵琶湖に渡ってくる冬鳥の代表とも言えます。シベリアの北極の近い所で7月頃に繁殖し、10月中旬にファミリーで日本へ渡ってきます。写真はファミリーで田んぼの落穂を食べている様子です。少し灰色がかっているのは幼鳥です。11月頃だと、はっきりと灰色といえる色だそうです。
オオワシの観察に山本山へ
オオワシがいる山本山の麓から600m程手前の県道で車から降りて、観測地まで歩いていきます。300m程歩くと大きな望遠レンズを付けたカメラマンがちらほら居ます。久下さんがフィールドスコープをセットして順に覗かせてくれました。フィールドスコープならはっきりとオオワシと分かりますが、肉眼で「あれかな?」って感じの距離で、8倍の双眼鏡で見ると大まかなシュリエットに黄色いクチバシを認識できる程度です。帰ってきてから計測すると約650m先です。
双眼鏡でもしっかりと観察できる距離まで近づくことにしました。
オオワシが飛んだ
オオワシまで450mぐらいの距離(この写真の地点)に近づいた時に、突然オオワシが木から飛びました。トビがオオワシにちょっかいを出してくるので、鬱陶しくなったのか、オオワシがトビを威嚇した後に木から飛び立ったのです。両翼2.4mの翼を広げて飛ぶ姿は素晴らしく雄大で、うっとりと見とれていると、私たちの正面を通り過ぎて行くではないですか。このまま飛び去られたら、まだじっくりと観察していないのに見れなくなるかもです。「止まれ!とまれ!」と声に出すと、私たちの正面を少し過ぎた、山の中腹に立つ木に止まってくれました。もちろん偶然の出来事ですが、450mぐらい離れた所から、300mぐらい離れた所まで飛んできてくれたことになります。
なんとラッキーなことでしょうか。オオワシの飛行が見れた上に、観察しやすい場所まで来てくれたのです。
この距離なら双眼鏡でも、体長1mあるオオワシをしっかりと観察できます。フィールドスコープなら、羽の感じや鋭い目など、かなり詳細な部分まで観察できます。
山本山のおばあちゃん
このオオワシはメスです。湖北で初観測されたのが1998年12月で、その時に既に成長だったので推定年齢が27~28歳と考えられています。野生のオオワシの寿命は20~25年とされていることから、かなりの高齢なのです。
いつの頃からか山本山のおばあちゃんと呼ばれるようになり、晩秋のころには「今年は来るのだろうか?」と注目されるようになりました。初冬に初観測されるとニュースになるぐらいの人気者なのです。
長浜市も山本山のおばあちゃんをアイコン(象徴的な存在)の扱いにしていて、長浜市の観光マップの山本山の所にオオワシのデザインのアイコン(絵記号)を刷り込んでいます。
山本山のおばあちゃんに限らずオオワシは、昭和45年に国の天然記念物に指定されています。
山本山のおばあちゃんは、凄く威厳があって見ていて飽きません。フィールドスコープを覗くと圧倒されます。
またトビが山本山のおばあちゃんから少し離れた所を旋回しだしました。山本山のおばあちゃんは何度か威嚇するように鳴きました。オオワシの鳴き声まで聞くことができて大満足です。
モズ
山本山から湖北野鳥センターへ向かう時に、15mぐらい先の低木に一羽の鳥が停まりました。バードウォッチング初心者の女性が「あの鳥は何と言う鳥ですか?」と久下氏に尋ねると「モズです」と教えてくれフィールドスコープをセットしてくれました。順に覗いた後、久下氏がスマスコ撮影をしだすと、モズは私たちの頭上を飛び越していきました。
残念と思いながらも飛んでいく先を目で追うと、40mぐらい先の木の枝に止まりました。双眼鏡で見ると2羽います。久下氏が「先ほどのモズはオスで、もう1羽はメスです」と説明してくれました。オスはメスに向かって鳴いています。体を動かし、メスの斜め上から、斜め下から、真横からと角度を変えて鳴くのでダンスを踊っているようです。久下氏が「鳴き声が変わっているのが分かりますか?」と言うので意識すると確かに鳴き声が変わっています。他の鳥の鳴き声を真似ているそうで、そのレパートリーが豊富だったり、鳴き真似が上手いオスがモテるそうです。
オスは熱心にアピールしていましたが、突然にメスの反対方向へ移ってアピールをやめました。ネタが尽きたのでしょうか?カップル成立ならずでした。
イカルチドリ
モズの求愛を観察した後、久下氏が田んぼの中にイカルチドリがいるのを発見。名前の通りチドリ目チドリ科の野鳥です。先ほど見たケリもチドリ目チドリ科の野鳥ですが、イカルチドリは少しふっくらとした感じで、ずいぶんと見た目が異なります。泥土の中を歩いているせいか、安定が悪そうにフラフラとして、正に千鳥足でした(笑)
時々、泥土にクチバシをツッコんでいます。久下氏が「ミミズとかを食べているのです」と教えてくれました。
湖北野鳥センター
センターの周辺の湖岸は遠浅だそうで、様々な野鳥にとって住みやすい環境だそうです。センターの窓辺には多くのフィールドスコープや双眼鏡が設置されていて、野鳥に焦点を合わせてあります。
山側の窓辺には子供用から大人用まで高さを変えたフィールドスコープが数台設置されていて、1km以上先にいる山本山のおばあちゃんに照準を合わせてあります。
久下氏はオオヒシクイをみなさんに見せたあと、スマスコ撮影しています。
オオヒシクイ
オオヒシクイはカモの仲間で、ヒシクイの亜種です。天然記念物に指定されている冬鳥で、オオヒシクイの飛来は各ローカルでのニュースで、秋の深まりを告げる野鳥として取り上げられることが多い鳥です。湖北には毎年9月末ぐらいに第一陣が渡来します。湖北のオオヒシクイは、水草のヒシ、水辺に群生するマコモ、田んぼの落穂などをエサにしています。
ホオアカ
「ホオアカが岸にいます」と湖北野鳥センターの館内放送が流れました。窓辺のスコープの一つがホオアカに焦点を合わせてあり、順に見せてもらいました。久下氏が「ホオアカを見たら外に出てください」とみなさんを急かせます。
湖北野鳥センターの前の道路を渡って湖岸ギリギリのところまで寄って、自分たちの双眼鏡でもホオアカを観察するためです。
ホオアカの大きさは、スズメよりも少し大きい、スズメ目ホオジロ科の野鳥です。ホオジロは目の下が白いのでホオジロ、ホオアカは目の下が赤っぽい色なのでホオアカと言います。最短の位置は逆光で、頬の赤みが分かりにくかったので、ホオアカの側面に大きく回り込んでフィールドスコープで観察し、その後にスマスコ撮影しました。ほっぺだけでなく、全身の色目もしっかりと分かります。
※ スズメと大きさを比較している理由は、バードウォッチング基礎知識 鳥の大きさをご覧ください。
カワセミ
ホオアカを側面から見るために位置を動いたのが幸いしました。移動した場所のすぐ近くにカワセミが現れたのです。お客さんの一人が「カワセミを見たい」と言っていたので、途中でカワセミが居そうなところもチェックしていたのですが、見ることができなかったのです。おそらく、時間をかけて待てば見れる可能性もあったのでしょうが、その時点ではメインの山本山のおばあちゃんもまだ見ていなかったので、今回は諦めようという感じでした。ところが、ツアーの終盤、不意にカワセミが現れたのです。
ミコアイサを探しに
今回のツアーで、できればミコアイサのオスを見たいと思っていました。ミコアイサのオスは繁殖期になるとほとんどの部分が白くなり、その姿を巫女の白装束に例えてミコアイサと呼ばれています。また、目の周りは黒いので、パンダガモと呼ぶ人もいます。大阪でも見れないことは無いのですが、非常に個体数が少ないので、湖北で見れたらと思っていました。
久下氏も下見ではミコアイサを見ることができたので、みなさんに見てもらいたいと思っていたようです。
湖北野鳥センターを出て、長浜ICへ向かう途中の湖岸でミコアイサ探しです。水路では滋賀県の県鳥であるカイツブリなどは見れましたが、ミコアイサはいません。
他の場所に移動した時です。久下さんが「ミコアイサがいました。オスです」と言いました。150mぐらい離れた防波堤の突端の近くです。
フィールドスコープをセットし順に覗いていると、水中に潜ってしまいました。水中に潜れるカモは、水中で泳いで魚などを追いかけるので、潜った所から離れた場所に出てくる場合が多いのです。みんなで、双眼鏡でミコアイサの行方を探していると、ひょっこりと現れました。先ほどフィールドスコープで見れなかった方や私もしっかりと見ることができました。そのすぐ後にまた潜ってしまい、その場所から防波堤よりも沖に出たのでしょうか。3度見ることはありませんでした。
残念なことに、その時のミコアイサをスマスコ撮影することはできませんでした。
※ 写真は久下氏が下見の時にスマスコ撮影したミコアイサです。
最後の探鳥
ミコアイサを探しがてら、湖面の見えるブッシュで野鳥を探します。ブッシュの中ではエナガやシジュウカラなどの野鳥が飛び交ってました。
その後、久下氏は時間いっぱいまで、浜からミコアイサ探しをしていました。
「鳥を見るのも好きですが、鳥を見て喜ぶみなさんの様子を見るのも大好きなんです」と言う久下氏。
今回、久下氏のリピーターさんが参加して下ってましたが、そのうちのお一人が「久下さんはいつも熱心にガイドをしてくれます」とアンケートに書かれていました。
ツアー参加のお客様の声 アンケートより
- 野鳥のエキスパートの方と一緒に行くことで、鳥の種類を詳しく知ったり、鳥の見つけ方を学ぶことができて勉強になりました。倍率の高い望遠鏡(フィールドスコープ)で野鳥を見れたのが、とても良かったです。また参加して、違う季節の鳥や鳴き声も知りたいと思います。
- バードウォッチングツアーは初参加でしたが、想像をこえる満足度でした。
野鳥ガイドの久下さんのおかげで、見るポイント、特徴、鳴き声など知識も増え、かわいい鳥たちの自然の姿を50種類以上も見ることができて、本当に充実の一日でした、これなら初心者でも楽しめるので、またツアーに参加したいと思います。 - 54種類の鳥と山本山のおばあちゃん(オオワシ)に出会えて大満足の一日でした。山本山のおばあちゃん、来年も元気に湖北へ来てください。
赤い頬のホオアカが、シェットランドセーターを着ているようで、とても可愛かったです。
久下先生、たくさんの野鳥を見せてくださり、ありがとうございました。 - 久下さんの熱心な案内と知識に、いつもながら感心します。
今年も湖北のオオワシを観測でき、ホッとした気分になりました。オオワシに、バードウォッチングを続ける勇気をもらったように思えました。
また、鳥好きのみなさんと一緒に、探鳥の旅にご一緒できたらと思います。
出会えた野鳥の一覧
帰りの草津パーキングエリアで、このツアーで出会えた野鳥の確認をしました。全部で55種もありました。
確認種リストを掲載しておきます。
種名 | 目 | 科 |
---|---|---|
ヒシクイ | カモ目 | カモ科 |
マガン | カモ目 | カモ科 |
コハクチョウ | カモ目 | カモ科 |
オシドリ | カモ目 | カモ科 |
オカヨシガモ | カモ目 | カモ科 |
ヨシガモ | カモ目 | カモ科 |
ヒドリガモ | カモ目 | カモ科 |
アメリカヒドリ | カモ目 | カモ科 |
マガモ | カモ目 | カモ科 |
カルガモ | カモ目 | カモ科 |
ハシビロガモ | カモ目 | カモ科 |
オナガガモ | カモ目 | カモ科 |
トモエガモ | カモ目 | カモ科 |
コガモ | カモ目 | カモ科 |
ホシハジロ | カモ目 | カモ科 |
キンクロハジロ | カモ目 | カモ科 |
ホオジロガモ | カモ目 | カモ科 |
ミコアイサ | カモ目 | カモ科 |
カワアイサ | カモ目 | カモ科 |
カイツブリ | カイツブリ目 | カイツブリ科 |
カンムリカイツブリ | カイツブリ目 | カイツブリ科 |
キジバト | ハト目 | ハト科 |
カワウ | カツオドリ目 | ウ科 |
アオサギ | ペリカン目 | サギ科 |
ダイサギ | ペリカン目 | サギ科 |
コサギ | ペリカン目 | サギ科 |
オオバン | ツル目 | クイナ科 |
ケリ | チドリ目 | チドリ科 |
イカルチドリ | チドリ目 | チドリ科 |
ユリカモメ | チドリ目 | カモメ科 |
トビ | タカ目 | タカ科 |
オオワシ | タカ目 | タカ科 |
ノスリ | タカ目 | タカ科 |
カワセミ | ブッポウソウ目 | カワセミ科 |
コゲラ | キツツキ目 | キツツキ科 |
アオゲラ | キツツキ目 | キツツキ科 |
モズ | スズメ目 | モズ科 |
カケス | スズメ目 | カラス科 |
ハシボソガラス | スズメ目 | カラス科 |
ハシブトガラス | スズメ目 | カラス科 |
シジュウカラ | スズメ目 | シジュウカラ科 |
ヒバリ | スズメ目 | ヒバリ科 |
ヒヨドリ | スズメ目 | ヒヨドリ科 |
エナガ | スズメ目 | エナガ科 |
ムクドリ | スズメ目 | ムクドリ科 |
ツグミ | スズメ目 | ヒタキ科 |
ジョウビタキ | スズメ目 | ツグミ科 |
スズメ | スズメ目 | スズメ科 |
ハクセキレイ | スズメ目 | セキレイ科 |
セグロセキレイ | スズメ目 | セキレイ科 |
カワラヒワ | スズメ目 | アトリ科 |
ホオジロ | スズメ目 | ホオジロ科 |
カシラダカ | スズメ目 | ホオジロ科 |
ホオアカ | スズメ目 | ホオジロ科 |
オオジュリン | スズメ目 | ホオジロ科 |
『日本鳥類目録 改訂第7版』(日本鳥学会2012)準拠
バードウォッチング ガイドツアー
バードウォッチング基礎知識
久下直哉氏監修のバードウォッチング基礎知識です。バードウォッチングを始める方は参考にしてください。
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