初めてのバードウォッチング 奈良公園 ツアー・レポート
2月20日(土)に開催された 初めてのバードウォッチング 奈良公園 に同行取材してきました。
昨年の12月から始まった初めてのバードウォッチングのシリーズの一つです。
初めてバードウォッチングをする人のために
初めてのバードウォッチングのシリーズは、双眼鏡も持っていないけど、バードウォッチングに興味があるといった入門者から、鳥が気になるのでバードウォッチングを始めてみたけど、上手く野鳥を見つけられないとか、見つけた野鳥が何かわからないといった初心者の方を中心に、大阪城公園や服部緑地のような都市公園、箕面公園や奈良公園などの郊外の公園などで開催しています。
この日の開催場所は奈良公園で、近鉄奈良公園に集合して、まずは興福寺に向かいます。
興福寺の入り口付近では、すでに数種類の野鳥の鳴き声が聞こえていて、移動中にみなさんの頭上をエナガが飛び、木の枝に止まるのを見たりして、説明が始まるまでにテンションが上がりました。
バードウォッチングの基本から
バードウォッチングとは文字通り、鳥を見ることです。鳥と言っても飼われている鳥ではなく、自然の中の野鳥を見るのです。言葉で書いてしまえば簡単なことのように思えますが、野鳥を見つけるのは初心者には簡単な事ではありません。
簡単だと思っている人は、実は周りにもっと多くの種類の野鳥がいることに気づいていないだけの可能性が高いのです。
また、ただ野鳥を見つけただけでは、バードウォッチングを充分に楽しんだことにはならないのです。
この辺りの事はおいおいと記載していきます。
野鳥の見つけ方 その1 木の上を見る
とても単純な方法ですが、木の上を見ることです。まずは双眼鏡を使わずに、直接目視で鳥らしきものを探して、怪しいと思ったら双眼鏡でチェックです。鳥の鳴き声が聞こえて葉や枝が揺れていたら、野鳥がいる確率は高いです。
久下氏が何かを見つけて、高倍率のフィールドスコープをセットしています。
葉が全て散った木の枝に、何か塊を見つけたので、双眼鏡で確認したら、やはり野鳥だったのです。初心者のうちは、このように葉が落ちた木はありがたいです。
みなさんも、それぞれに双眼鏡で確認したら、鳥の形をしていることに気付きました。ちょっと遠いので、順に久下氏のフィールドスコープを覗かせてもらい、ヒヨドリであることを確認しました。
野鳥の見つけ方 その2 鳥の鳴き声を聞く
鳥の鳴き声を聞いて、周りにどのような野鳥がいるか分かれば、その野鳥の好みの場所、特徴や行動などを探す材料にして見つけることができます。もちろん、入門者や初心者にはハードルが高いことですが、これから先に重要なことなので、最初は、久下氏が鳥の鳴き声から野鳥を見つける様子を見学するだけでも良いのです。素早く野鳥を見つけることができる方は「バードウォッチングは8割が鳥の鳴き声を聞くこと」とおっしゃいます。
ここでは、先ほどフィールドスコープで見せてもらったヒヨドリを、個々の双眼鏡で観察することができました。自分で双眼鏡を使って野鳥を見れると嬉しいものです。
野鳥の見つけ方 その3 地面を移動する鳥をみつける
広く開けた所にやってくると、地面でひょこひょこ動いているモノが見えました。双眼鏡で見るとツグミでした。ツグミの近くをハクセキレイがせわしなく、行ったり来たりしていました。
この時のツグミは、すぐには飛び立たなかったので、割と長い時間、各々の双眼鏡や久下氏のフィールドスコープで観察することができました。「ツグミは1、2、3と歩いて胸を張ります」と教えてもらい、観察しているとその通りの動きをしていました。
※ フィールドスコープで拡大した被写体をスマホで撮影することをスマスコ撮影と言います。
ジョウビタキのオスを見つける
池がある所に下りて行く時に、広場に多くのツグミがいるのが見えました。遠目に見ても「1、2、3、シャキン」の動きなのでツグミと分かりましたが、飛んでは木の枝に止まり、また木の枝から地面へと飛ぶツグミよりも小さい、スズメぐらいの大きさの鳥がいるのに気付きました。ジョウビタキのオスでした。
一旦は少し離れた所に飛んで行ったのですが、後に同じ辺りに戻ってきたので、じっくりと観察しました。胸からお腹にかけて見事なオレンジ色しているのでオスで、通称ジョビオ君です。メスはオスに比べて一見地味な色をしていますが、なかなかキュートでジョビコと呼ばれています。ジョウビタキは冬鳥の人気者なのです。
※ ジョビコちゃんの写真は服部緑地のレポートでご覧いただけます。
野鳥の見つけ方 その4 池や湖の水面を見る
池や湖などの水面にはカモの仲間や、その他の野鳥を見ることができるでしょう。また、水辺にも野鳥はいます。こういった野鳥は、比較的大きくて動きがゆっくりなので、初心者でも観察しやすいです。
そして、これは私の経験談ですが、水鳥で双眼鏡の扱い方を練習しました。ゆっくり動いてるからといって、のんびりと双眼鏡を合わせるのではなく、できるだけ素早く双眼鏡を合わせるのです。木の枝に止まる鳥の多くは、割とすぐに次の木や枝へと飛びます。のんびりと双眼鏡を合わせていると、その間にどこかに飛んでしまい、双眼鏡で見ることができないのです。しかし、素早く双眼鏡を合わせることができると、双眼鏡で見れる機会が増えるので、バードウォッチングが楽しくなります。
池や川などにいる野鳥は、水に潜れる鳥と潜らない鳥がいます。これは種類が異なります。
バードウォッチング初心者あるあるですが、「水に浮かんでいる鳥は、全部カモだと思っていた」というのがあります。カモ目カモ科の野鳥はけっこういて種類が多いのです。また、素人目にカモと思うような感じでも、カイツブリを代表とするカイツブリ目の野鳥や、私が驚いたのは“黒いカモ”と思っていたのがオオバンというツル目クイナ科の野鳥で、絶滅危惧されている沖縄のヤンバルクイナと同じ仲間なのです。
野鳥の見つけ方 その5 水の上に張り出した木の枝を見る
そして、水面に張り出した木の枝にも野鳥はいるのです。
池の近くで、久下氏が速足で池の方へ行ったので、みんなで付いていきました。私は瞬間ですが、水にバシャ!と飛び込む何かを見ました。その物体は水面から飛びあがり、水面からそう高くない所をスイーと飛んでいきました。見事な青色だったので、カワセミだと気付きました。カワセミは見る間に遠くへ飛んでいきました。久下氏は魚を捕まえていたのまで見ていたので、おそらく巣まで飛んで行ったのでしょ。
久下氏は、カワセミの鳴き声が聞こえたので、カワセミが居そうな水の上に張り出した木の枝を目指したのです。
野鳥の見つけ方 その6 水辺を見る鳴き声
水辺にいる野鳥は、あまり動かないので、じっくりと観察できることが多いです。この時、カワウが大きく羽を広げていました。バードウォッチングを始めてみると、カワウが羽を広げているシーンは割と見かけるようになります。カワウは水に潜って餌を捕る鳥です。水に浮くようにしている野鳥のほとんどは、体から脂を出して、それを羽に塗って水を弾くようになっていますが、カワウはその脂の分泌量が多くないので、羽がズブズブに濡れるのです。だから、羽の水気を乾かすために、羽を広げていることが多いそうです。
久下氏が「目を見てください!きれいなエメラルド色ですよ」と教えてくれて、フィールドスコープを覗いてみて、その美しさに驚きました。
別の池で野鳥を観察
別の池に移動して野鳥の観察です。
ホシハジロです。
ハジロは羽白のことで、羽が白い鳥によく○○ハジロといった名前が付いています。
顔が赤褐色のホシハジロはオスです。目が赤いですね。
カワセミが再び
この池は、先ほどの池よりも高い位置にあり、下の池へ水が流れ出る排水溝があります。その排水溝の淵にキセキレイがちょこちょこ動いているのをお客さんが気付いたので、双眼鏡をホシハジロからキセキレイに合わせ直して観察を始めました。胸から腹部が黄色くってかわいいです。
皆さんが「かわいい」「きれい」と言っていると、キセキレイの近くを青い物体が飛びました。カワセミです。池の離れた所に水面まで張り出している松の裏側に飛んでいくところまで目視できました。松の枝に止まっていればラッキーです。
捜索しましたが、松の向こう側から更にどこかに飛んでいったのか、カワセミの姿を捕えることはできませんでした。
※写真は別の場所で撮影したカワセミで、参考資料として掲載しております。
ちなみに、排水溝のところでキセキレイを見つけたお客さんはリピーターさんなので、排水溝の辺りに野鳥が現れる可能性が高いことをご存知だったのでしょう。
飛火野で野鳥観察
飛火野へやってくると、あちらこちらでツグミが「1、2、3、シャキン」をしています。
よく見ると、ツグミ以外にも野鳥はいるのです。
大きさはスズメぐらいで、地面で何かを忙しくついばむカワラヒワを、久下氏が見つけてフィールドスコープで順に覗かせてもらいました。
野鳥の見つけ方 その7 森林で木の枝や地面を見る
薄暗い森林に入ってきました。鳥の鳴き声が聞こえていて、鳥の羽音も聞こえるので、野鳥がいる気配を感じますが、森林は少し暗かったり、木の葉などが邪魔で、初心者にとって野鳥を見つけるは難しいです。それでも、参加者のみなさんは鳥を目で捕えることに慣れてきたので、数種類の野鳥を見ることができました。
木の枝ではなく、フェンスに止まるモズも見ることができました。
他に、地面辺りをちょろちょろしているシロハラや、わずかな時間でしたがクロジやシジュウカラなども見れました。 シロハラは腹部が白いからシロハラという名前です。ツグミと同じスズメ目ヒタキ科の野鳥です。
野鳥の見つけ方 その8 小川などは要チェック
橋を渡る時でも、さっさと渡ってしまうのではなく、小川などは野鳥が水を飲みに来たり、餌を捕りに来る場所なので、要チェックです。特に水浴びをしている時は翼を広げているので、見れたらラッキーです。
野鳥の見つけ方 その9 林道は歩き出す前に要チェック
木が生い茂っている林道に入る前には、野鳥が居ないかチェックしましょう。野鳥がいるのに、ずけずけと林道に足を踏み入れると飛んで行ってしまいます。先ずは、林道、道の端、木の枝などを見回してみましょう。
この日、林道を進むと青い鳥が飛んで谷に下りて行きました。ルリビタキでした。しばらく静かにして待っていると戻ってくることもあります。この日は待つ時間が無かったので、先に進みましたが、近々にその場所に来れるのなら、同じ時間帯に来ると、再会できる可能性が高いので、メモを残しておきましょう。
※上の写真はイメージで、奈良公園ではありません。
モズを再発見
折り返してきて、先にモズやクロジが見れた森林を抜けたところで、再びモズを発見。場所的に先ほどモズを見ることができた所とほとんど同じ場所でした。一度飛んでしまったのですが、藤棚に止まってくれたので、じっくりと観察することができました。
野鳥の見つけ方
今回は入門者の方が多く、初めて双眼鏡で野鳥を見る方も多かったのですが、自分の眼で野鳥を捕え、双眼鏡で野鳥を観察する面白さを感じていらっしゃたようです。入門後にマイ双眼鏡を購入して、自身でソロ・バードウォッチングを始める方もいるでしょう。
また、初心者の方々が、とても熱心に質問をされていました。ソロ・バードウォッチングを始めるとツアーの時のように、多くの野鳥を見つけられないという壁に当たります。その時に、ツアーの時に久下氏が説明していた野鳥の見つけ方を思い出してください。それでも、野鳥を見つけられないと思った時は、またツアーに参加して野鳥の見つけ方のスキルを上げてください。自分で野鳥を探そうとした後に、ツアーに参加すると1回目の時よりも探し方のコツが実感できるはずです。
私自身がそうだったので、今回のレポートは野鳥の見つけ方を整理するような内容にまとめることができるようになってきました。
久下氏は「慣れたら鳥を見つけれるようになります」という言葉は使いません。何事にもノウハウがあり、久下氏がガイドするツアーは、参加された方がしっかりと野鳥の見つけ方を身に付けてもらう事を重要としています。
ですから、質問にもしっかりと答えてくれます。
鳥の鳴き声を知ろう
今回の参加者の中に、久下氏が鳥の鳴き声から素早く野鳥を見つけるシーンを目の当たりにして”鳥の鳴き声を覚える”ことの重要性を実感し「どうしたら鳥の鳴き声を覚えることができますか?」という質問が出ました。
今は、CDやアプリもありますが、鳥の鳴き声を判別できる上級者や初めてのバードウォッチングで実際に鳥の鳴き声を聞いて覚えるのが一番とアドバイスされていました。そして「何度も同じ鳴き声を、何の鳥かを尋ねられても答えます」「何故なら自分自身がバードウォッチングを始めた時がそうだったから」とおっしゃっていました。
バードウォッチング初級者の方は、鳴き声を覚えることにポイントをおいてツアーに参加して、中級者へステップアップするのも一つの方法だと思います。
私自身も久下氏から「今、ギーギーと鳴いたのはコゲラ(日本で最少のキツツキ)です」と教えられて耳を澄ますと、再び「ギーギー」という鳴き声を聞きとりました。後日、鶴見緑地で「ギーギー」という鳴き声がして木の幹を見上げて行くとコゲラを見つけることができて、とても嬉しかったです。その数日後に鶴見緑地でメジロなどを見ていると「ギーギー」という鳴き声が聞こえたので木の枝から木の幹へ視線をスイッチするとコゲラを見つけることができ、木の枝に移ったところを撮影することが出来ました。
鳴き声を頼りに野鳥を見つけられるのは、まだコゲラだけですが、徐々に増やしていきたいと思います。
このレポートをご覧いただいたバードウォッチング初心者の方が、少しでも多くの野鳥と出会えればと思います。
出会えた野鳥の一覧
今回の 初めてのバードウォッチング 奈良公園で出会えた野鳥の一覧です。
種名 | 目 | 科 |
---|---|---|
カルガモ | カモ目 | カモ科 |
ホシハジロ | カモ目 | カモ科 |
カイツブリ | カイツブリ目 | カイツブリ科 |
カワウ | カツオドリ目 | ウ科 |
ダイサギ | ペリカン目 | サギ科 |
オオバン | ツル目 | クイナ科 |
カワセミ | ブッポウソウ目 | カワセミ科 |
コゲラ | キツツキ目 | キツツキ科 |
モズ | スズメ目 | モズ科 |
ハシブトガラス | スズメ目 | カラス科 |
ヤマガラ | スズメ目 | シジュウカラ科 |
シジュウカラ | スズメ目 | シジュウカラ科 |
ヒヨドリ | スズメ目 | ヒヨドリ科 |
エナガ | スズメ目 | エナガ科 |
メジロ | スズメ目 | メジロ科 |
ムクドリ | スズメ目 | ムクドリ科 |
シロハラ | スズメ目 | ヒタキ科 |
ツグミ | スズメ目 | ヒタキ科 |
ルリビタキ | スズメ目 | ヒタキ科 |
ジョウビタキ | スズメ目 | ツグミ科 |
スズメ | スズメ目 | スズメ科 |
ハクセキレイ | スズメ目 | セキレイ科 |
キセキレイ | スズメ目 | セキレイ科 |
ビンズイ | スズメ目 | セキレイ科 |
アトリ | スズメ目 | アトリ科 |
カワラヒワ | スズメ目 | アトリ科 |
クロジ | スズメ目 | ホオジロ科 |
『日本鳥類目録 改訂第7版』(日本鳥学会2012)準拠
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バードウォッチング基礎知識
久下直哉氏監修のバードウォッチング基礎知識です。バードウォッチングを始める方は参考にしてください。
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