小笠原諸島トレッキングツアー レポート

2022年4月3日(日)~8日(金)に5泊6日で世界自然遺産に登録されている小笠原諸島のトレッキングツアーに同行して来ました。小笠原諸島は30余りの島々で構成されていますが、日本列島や大陸と陸続きになったことがない海洋島のため、閉鎖された環境に多くの固有動植物が独自の進化を遂げながら生息しており、同じく海洋島に属しダーウィンの進化論で有名なガラパゴス諸島にちなんで、東洋のガラパゴスとも称されます。動植物の進化や発展の過程、独自の生態系を示していることが認められ、2011年6月に世界遺産に登録されました。

ちなみに、小笠原諸島は、1593年に信州深志城(松本城の前身)城主 小笠原長時のひ孫である小笠原貞頼により発見されたとされ、1675年に江戸幕府が調査のための船を送り「無人島(ブニンジマ)」と名付けられました。
1830年にハワイ王国(カメハメハ3世 統治)から、捕鯨船に水と食料を供給することが目的でやってきた、欧米人5人とハワイ人15人の計20人が、初の入植者となりました。
1876年(明治9年)に日本が領有宣言をして、小笠原諸島は国際的に日本領土として認められました。
このような経緯から、人も文化も言葉も、欧米、ハワイ、南洋諸島、八丈島、本土のものが入り混じり、英名も、無人島→ブニンジマ→Bonin Islands(ボニン・アイランズ、ボニン諸島)となり、島の言葉も、小笠原の海の色をボニン・ブルーと表現したり、固有の植物に例えばムニンヒメツバキというように、ムニン・ボニン(上の写真)があふれています。

小笠原諸島トレッキングの行程

ツアー1日目(4月3日):関西発、品川駅に集合し竹芝港にてフェリーに乗船。【船中泊】

ツアー2日目(4月4日):父島着後、南島上陸&ホエールウォッチングクルーズ。夕食後はナイトツアーで自然観察。【父島泊】

◎南島トレッキング 距離約1km、行動予定約1時間、獲得標高100m

ツアー3日目(4月5日):千尋岩(ハートロック、300m)トレッキング。トレッキング後は自由行動。【父島泊】

◎距離8km、行動予定約7時間、獲得標高700m

ツアー4日目(4月6日):フェリーにて母島に渡り小笠原諸島最高峰・乳房山(463m)トレッキング。【母島泊】

◎距離約5km、行動予定約6時間、獲得標高930m

ツアー5日目(4月7日):小富士(86m)・南崎ハイキング。フェリーを乗り継ぎ本土へ。【船中泊】

◎距離約4km、行動予定約4時間、獲得標高450m

ツアー6日目(4月8日):竹芝港から品川駅へ向かい解散。関西着。

小笠原トレッキングツアーの様子

この小笠原ツアーは、30余りの島々のうち一般住民が生活している父島と母島の2島だけに滞在し、無人島 南島の上陸も目指すツアーです。
今回のツアーのお客様は全員関西からのご参加、そして、同行した私は東京スタッフだったため、新幹線で品川駅までお越しいただき、そこからフェリー乗り場の竹芝港へ一緒に向かいます。

おが丸で小笠原へ

小笠原諸島の父島・母島には空港がなく、交通手段は船のみ。本土と小笠原諸島を結ぶ定期便としては唯一のおがさわら丸(通称:おが丸)を利用します。おが丸の運航は、基本的に約6日に1便。乗船すると6日間は本土に戻ることができません。ちなみに、島民の生活物資が届く唯一の手段もおが丸のみだそう。また、小笠原は行政区域上は東京都ですが、東京都港区にある竹芝港から24時間の船旅です。地球の裏側ブラジルへのフライト時間が約25時間~(アメリカ経由の場合)なので、所要時間だけでも海外旅行気分です。

おが丸の様子

おが丸船内には、レストラン・売店・24時間利用可能なシャワールーム・ラウンジの他、軽食やおつまみを含む自販機コーナー、電子レンジ、給湯器、水素水給水機、冷蔵ロッカーなどもあり、携帯の電波が八丈島を過ぎて嫁島に着くまでの約15時間は不通になることと(衛星公衆電話は利用可)、Wi-Fiがないこと以外は不自由なく過ごせます。

写真は、レストランChichi-jimaの先代おが丸から続くメニュー 島塩ステーキ。

島塩ラーメン

展望ラウンジHaha-jimaでしか食べられない船内で焼いたアップルパイです♪

但し、注意すべきは船酔い。黒潮を横切る外洋航海なので、天候や海況次第では激しく揺れます。このときも往路はかなり揺れ、酔い止め薬を服用したにもかかわらず重度の船酔いに苦しみ異常を訴えられたお客様がいらっしゃいました。船酔いを即効で治す魔法はありませんが、クルーや父島到着後の宿ともしっかり連携を図り、ケアや荷物の管理等、精一杯サポートいたします。

ツアー1日目 父島1日目

前述のように往路のおが丸はかなり揺れ、海況不良により父島への到着が予定より50分遅れました。この日の行程に組み込まれている南島上陸&ホエールウォッチングクルーズの開始予定時刻には間に合わないので、皆様が昼食を召し上がっている間に手配していたガイドと打合せして調整します。

天然記念物 南島へ

昼食後は、青灯台からボートに乗ってまずは南島を目指します。父島の南西に位置する無人島の南島は島全体が天然記念物とされ、1日の上陸人数は100人まで、東京都認定ガイドの同行必須、滞在時間は2時間以内、入島禁止期間がある等、上陸のための条件が定められており、しかも、上陸地点への水路が狭く入れる船の大きさも限られるため、上陸できるかは条件クリアだけでなく気象・海況にも左右されます。

上陸地点は鮫池と呼ばれるエメラルドの入り江。鮫池という名前の通りネムリブカが集まっています。

こちらは扇池。映画「紅の豚」のオープニングシーンのモデルと言われています。珊瑚の白砂が海まで続き、陽の光が屈折してきれいなエメラルドグリーンを作り出します。

砂浜に沢山ある貝殻は…固有種ヒロベソカタマイマイの半化石です。まるで最近まで生きていたかのようですが、はるか昔に絶滅したそう。

ホエールウォッチング

南島を出たら、ボニンブルーの海から翌日目指す予定のハートロックを眺めながら、ザトウクジラのウォッチングスポットに向かいます。

ウォッチングスポットに近づいたら、ガイドの説明を聞きクジラのブロウ(潮吹き)を探します。クジラは、ウォッチングスポットに限らず、島のあちこちからも船の上からも見るチャンスがあるので、ブロウ探しは是非マスターしたいです。

最初はよくわからず、波のしぶきや岩がクジラに見えたりもしたものの、結構な頻度で姿を見せてくれたので、繰り返し探しているうちに見つけるコツを掴めました!ちなみに、商用捕鯨全面禁止後の1988年(昭和63年)に日本で初めてホエールウォッチングが行われたのは小笠原の母島です。

島魚盛りだくさんの夕食

南島&ホエールウォッチング後は夕食の時間まで自由に過ごしました。

お待ちかねの夕食は、島魚盛りだくさんのメニューで、小笠原に行ったら食べるべき!年に135頭の捕獲が認められているウミガメの刺し身も注文できました。

かつては自由に手に入らなかったワサビの代わりにカラシを入れて日持ちを良くした島寿司は、八丈島から伝えられたそうですが、今や島の代表的な郷土料理となっているのだとか。

そして、デザートには小笠原といえばパッション!というくらいメジャーなパッションフルーツも堪能♪

自然観察ナイトツアー

お腹いっぱいの夕食後は、この日最後の行程「自然観察ナイトツアー」へ。大好物のモモタマナの木にぶら下がるオガサワラオオコウモリを観ることができました!ちなみに、オガサワラオオコウモリは小笠原諸島に自力で渡ることのできた唯一の固有哺乳類です。

ツアー2日目 父島2日目

宿で島魚や島ミニトマトなど島食材が使われた朝ごはん。島ミニトマトの甘さにビックリ!パッションフルーツとともに是非とも本土に持ち帰りたい特産品です。美味しい朝食を頂いた後は、宿まで迎えに来てくれた現地ガイドの車に乗り、東京都自然ガイド同行必須の千尋山、通称ハートロックを目指しましょう。

小笠原の固有種

ハートロックまでの山道は、小笠原の自然・歴史などに触れることができる場所です。小笠原では、街中でも固有種を目にしますが、とりわけ森の中では数多くの「固有種」に出会うことができます。ただ、絶海の孤島も、入植者が生きるために持ち込み育てた動植物や貨物に紛れた害虫、また、近年では観光客の靴底や持ち物に付着した生き物や植物の種など、様々な「外来種」によって、固有種の種の存命が脅かされています。小笠原の東京都自然ガイドは案内役のみならず自然保護をも使命としています。

マルハチ

タコノキ

オガサワラビロウ

ムニンヒメツバキ

外来種

こちらは外来種たち。

家畜として持ち込まれたヤギが野生化したノヤギ。

ペットとして持ち込まれたり、荷物に混入していたグリーンアノール。

グリーンアノールは周囲の環境や気分によって背面や腹部、眼が変色するそうです。

旧帝国陸海軍の残骸

同じ小笠原村に属している硫黄島は太平洋戦争の激戦地として映画化される等有名ですが、父島にも旧帝国陸海軍が配備されていました。千尋山にも軍用車の残骸、陸軍のマークが入った食器、豪など、様々な戦跡が残されています。

山道の大部分は戦時中の軍道だったそうですが、今では草木が生い茂りとても車が通れる幅ではなく、77年の時の経過と自然の力を感じます。

余談ですが、島民は1944年に本土に強制疎開となり、敗戦後はアメリカ統治を経て、欧米系以外の島民が帰島できたのは1968年の返還後だそうです。

ハートロック

そうこうしているうちにハートロックに到着!

近くには昨日上陸した南島、遠くには明日向かう母島が見えています。

絶景やクジラを眺めながら食べるお弁当が最高に美味しい~

ガジュマル広場

帰りに通ったガジュマル広場。かつてはここに人が住み、ガジュマルがお隣との境界線や塀の代りになっていたようです。巨大なガジュマル木登りに挑戦しちゃいました。

カフェ USK COFFEE

下山後は、小笠原のコーヒー農園経営のカフェ USK COFFEE に立ち寄り、少数高品質のボニンアイランド・コーヒーやオガサワラオオコウモリ大好物のモモタマナ入りクッキーなどを楽しみました。ちなみに、小笠原は明治11年 (1878年)に日本で最初にコーヒー栽培が始まった場所です。

自由時間を満喫

宿に戻ったら、自由時間!皆さんそれぞれ周辺を散策したり、お土産を買ったり、お食事をしたり…と小笠原時間を楽しんでいらっしゃいました。宿の近くには郷土料理だけでなく、島の食材を使った創作料理や洋食など、それぞれのお店に気になるメニューが沢山…。

写真は、この日、一部のお客様や私も食べた島塩ソフト。

カメの生ハム

島魚のボロネーゼです。

ツアー3日目 母島へ

島の食材を使った美味しい朝ごはんをお腹いっぱい食べたら、母島への唯一の手段 ははじま丸(通称:はは丸)に乗って父島から南へ50km、2時間の母島に向かいます。ちなみに、はは丸も毎日は運航しておらず、時刻表も日によって異なります。
母島でお世話になった東京都自然ガイドの方は、父島でのお子さんの入学式に出席して母島に戻るために、はは丸の運航スケジュールに合わせて父島に2泊しないといけないとのことでした。船の時間によって自ずと日程が決まってくる島旅ですが、存分に満喫できるプランニングは弊社にお任せください。

乳房山トレッキング

母島に到着したら、2日間お世話になる東京都自然ガイドの車に乗って、小笠原諸島最高峰で、しま山100選にも選定されている乳房山(ちぶさやま)の登山口に向かいます。

ちなみに、乳房山と翌日向かう小富士は、東京都自然ガイドの同行は必須ではありませんが、どちらの山も、固有種や戦跡、絶景スポット、島の歴史や暮らし等、現地ガイドの説明を聞きながら歩くことをおすすめします。

ただ、父島はガイド会社が複数存在するものの、母島は個人ガイドが基本で、人数もそう多くありません。途中「予約がいっぱいでガイドが頼めなかった」という個人旅行者に何度かお会いしました。

亜熱帯の樹々が生い茂るジャングルのような登山道を歩きます。

ムニンシラガゴケ

固有種のムニンシラガゴケ。ハート型です♡

ハハジマメグロ

母島にのみ生息する固有種ハハジマメグロにも出会いました。飛び回っていて特徴のある目の周りをカメラに収めることが出来ませんでした。

なので、下山後に立ち寄った郷土資料館 ロース記念館で撮った、はく製の写真をご覧ください。

乳房山 頂上

乳房山に登頂!!

標高約463mの低山です。

展望デッキからの眺め



展望デッキからの目の前に広がる大崩湾の青色が印象的でした。

この日のガイドさんは乳房山山頂からの景色を眺めて、母島への移住を決めたそうです。

下山後のひととき


下山後は、小笠原母島観光協会で乳房山の登頂証明書(有料)を発行してもらったりしつつ、この日の宿へと送っていただき、夕食を挟んで、海辺を散策したり、買い物を楽しんだり…各自自由な母島時間を過ごしていただきました。

夕食は、お肉もお魚も野菜も盛り沢山でお箸がどんどん進みました。とりわけ初獲れの生亀刺しを食べられたことに感激!

すごい数の星を見ることができました。

ツアー5日目 小笠原最終日

小笠原の最終日です。

日本最南端の郷土富士 小富士に登った後、はは丸でおが丸が待つ父島に戻ります。

本日も、ジャングルのような遊歩道を楽しく歩きます。

固有種のタコノキ(写真はタコノキの実)や

シマギョクシンカなどを沢山目にすることができます。シマギョクシンカは香りがとても良いので、シマギョクシンカの香りの入浴剤をお土産にするのもおすすめです。

スリバチ展望台で一休みしていたら、

天然記念物のオカヤドカリが、私たちのそばをちょこちょこと通り過ぎていきました。

「モーウモーウ」と声のする方を見たら、島では赤ぽっぽと呼ばれる、固有亜種で絶滅危惧種のアカガシラカラスバトでした。

小富士 登頂

別名小さな富士山、標高86mの小富士に登頂!日本で一番早い日の出が拝めるといわれる場所です。

登頂した時間帯は曇り空でしたが、母島全土を見渡すことができました。

目の前の南崎海岸や鰹鳥島、丸島、二子島、平島、向島といった眺めが素晴らしかったです!

カツオドリ

ちなみに、鰹鳥島にいるカツオドリとはこんな鳥です。

本土へ

小富士から沖港へ戻り、はは丸で父島へ。乗船間際まで最後の小笠原時間を楽しんだ後、本土から乗ってきたおが丸へ再び乗り込みました。

出港時には小笠原名物のお見送りがあります。港では小笠原太鼓や南洋踊り等のセレモニーもあり、島民総出で手を振ってくれ、何隻ものボートがおが丸と並走します。

島に残る人が島を去る人に島の花で作ったレイを贈り、贈られた人はレイを海に投げ込む。海に投げ込まれたレイが島に流れ着くと、その人は再び島に戻ってくるという言い伝えがあるそうです。

帰りのおが丸は揺れも穏やかで、再び24時間かけて本土へと戻りました。
ご参加者の皆さん、お疲れ様でした!そして、ありがとうございました。またのご参加をスタッフ一同 心よりお待ちしております。

ツアーリーダー:小西友恵(東京スタッフ)

 

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